直木賞作家・澤田瞳子が語る創作の深淵と注目の最新映像化計画
澤田文学の歩みを振り返る際、奈良時代というこれまで小説の舞台として敬遠されがちだった時代にあえて光を当てた『孤鷹の天』の衝撃は外せない。政治的政争の渦中に置かれた若き官人の苦悩を丹念に描き、デビュー作にして中山義秀文学賞を最年少で受賞したことは、歴史小説の世界に新たな巨星が誕生した瞬間だった。
さらにその評価を決定づけたのが、天然痘の猛威にさらされた平城京を描いた『火定』である。感染症の恐怖に怯え、混乱に陥る都で、医師や役人、市井の民がどのように命と向き合ったのか。パンデミックという極限状態における人間の心理を克明に描いた本作は、後に訪れる現実の社会情勢を予見していたかのような凄みを持ち、吉川英治文学新人賞の候補となるなど各方面から絶賛を浴びた。