フルバ草摩はとりの悲しき過去と「辰」の呪い―名言に隠された真実
草摩はとりが宿す「辰」の物の怪は、伝承にある壮大な龍ではなく、掌に収まるほど儚いタツノオトシゴの姿をとる。このギャップ自体が彼の内面に潜む哀愁を象徴しているかのようだ。
草摩家の専属医という立場は、一族の秘密を守る要職であると同時に、当主・慊人の横暴を間近で受け止める防波堤でもある。彼が失った左目の視力は、かつて恋人である佳菜との結婚を慊人に乞うた際、激昂した慊人に灰皿で殴りつけられた傷によるものだ。暴君の前に屈せざるを得ない一族の歪んだ構造が、はとりの肉体と心に癒えることのない深い爪痕を残した。