欲望と狂気描く鬼才・国友やすゆきが漫画界に刻んだ衝撃作の正体
国友の名を不朽のものとしたのが、1990年代に放たれた『100億の男』である。平凡なサラリーマンだった富沢琢矢が、突如として背負わされた100億円という天文学的借金を返済すべく、政財界のフィクサーや海千山千の投資家たちを相手に命懸けのマネーゲームを挑んでいく。
M&A、敵対的買収、株式市場の裏工作。当時まだ一般には馴染みの薄かった金融用語や資本主義の冷徹なゲーム理論を、息もつかせぬエンタメへと仕立て上げた手腕は見事というほかない。まさに日本の経済サスペンス漫画における最高峰と呼ぶにふさわしい金字塔だ。
フジテレビ系列で制作されたテレビドラマ版では、主人公の富沢琢矢役を緒形直人が熱演。極限状態の中で冷徹な怪物へと変貌していく男の生き様を泥臭く演じ切り、高視聴率を記録した。カネに魂を売り渡さずにカネを支配できるのかという根源的な問いは、視聴者の胸に深く突き刺さった。