永遠の17才・井上喜久子の現在地 名演の舞台裏と愛され続ける理由
彼女の代表作を語るうえで絶対に外せないのが、90年代のアニメシーンを定義づけた作品群だ。『ああっ女神さまっ』のベルダンディー役で見せた慈愛に満ちた声は、当時のファンに強い衝撃と癒やしを与え、ファンタジーアニメのヒロイン像に決定的な影響を与えた。上品で穏やかな声質は、異世界の存在である女神の神聖さと親しみやすさを完全なバランスで同居させていた。
一方で、『らんま1/2』の天道かすみ役では、大和撫子のような優しさとマイペースな一面を絶妙なニュアンスで表現してみせた。賑やかな天道家の中で、どんなトラブルが起きても微笑みを絶やさないかすみの存在は、作品の清涼剤であり続けた。この時期に確立された「包容力あふれるお姉さん・お母さん」のイメージは、今なおアニメ史に輝く金字塔である。