映画『ある男』愛した夫は誰?衝撃の正体と結末、戸籍交換の真相を解剖
物語の発端は、宮崎で文具店を営む谷口里枝(安藤サクラ)のもとに舞い込んだ悲報でした。再婚相手として誠実に家族を愛し、林業の現場で不慮の事故死を遂げた夫・大祐(窪田正孝)。しかし、疎遠だった大祐の実兄・恭一(眞島秀和)が遺影を見るなり放った「これ、大祐じゃないです」という一言から、恐るべき真実の扉が開かれます。
里枝から身元調査を依頼された弁護士の城戸章良(妻夫木聡)が執念の調査の末に突き止めた男の正体は、かつて将来を嘱望されたプロボクサー、原誠(はら まこと)でした。
原誠が他人の名前を欲した理由は、あまりに過酷な出自にあります。彼の父親は、世間を震撼させた無差別殺人事件の凶悪犯(死刑囚・小林)。誠は幼少期から「殺人犯の息子」という拭い去れない烙印を押され、周囲からの激しい差別と偏見に晒され続けてきました。ボクシングに打ち込みチャンピオンを目指したのも、自分の中に流れる「狂気の血」を力でねじ伏せるためでしたが、リング上で相手を容赦なく打ちのめすたび、父親の影に怯える悪夢から逃れられなくなってしまいます。
自らの存在そのものを消し去りたい――。精神的に追い詰められた誠は、裏社会で戸籍の売買・交換を仲介していた男・小見浦(柄本明)の手引きにより、伊香保温泉の老舗旅館の次男でありながら家族関係を断ち切りたがっていた「本物の谷口大祐」(仲野太賀)と出会い、戸籍を交換したのです。