伊勢神宮祭主として生きる黒田清子様、静寂の祈りと知られざる日常
元皇族としての顔、そして祭主としての顔に加えて、彼女を語る上で欠かせないのが「研究者」としての実績である。内親王時代から長年にわたり山階鳥類研究所に非常勤研究助手として勤務し、日本の鳥類学の発展に実質的な貢献を果たしてきた。
特に皇居内で行われたカワセミ研究プロジェクトにおいては、地道なフィールドワークと膨大なデータの蓄積を担当した。派手な成果発表よりも、日々の丹念な観察を重視する姿勢は学術界でも高く評価された。ある共同研究者は振り返る。
「清子さんは、泥に足を取られながらも双眼鏡を離さず、何時間もカワセミの飛翔や営巣を記録されていました。皇族だからといって特別な扱いを求めることは皆無で、一人の研究員として議論を交わし、学術論文を共同執筆されたのです。自然に対する客観的で愛情に満ちた眼差しは、現在の祭主としての自然観・神観にも深く通底しているように思えます」
自然界の微細な変化に耳を澄ませる研究者としての訓練は、四季の移ろいとともに神々をもてなす神宮の祭祀とも見事に重なり合っている。