吉岡秀隆『ラストソング』の魂揺さぶる歌唱力と本木雅弘との名演の裏側
本作の軸となるのが、吉岡秀隆演じる天才的な音楽センスを持つ内省的な青年・一平と、本木雅弘演じる野心に燃えるカリスマボーカリスト・八住修吉の対比だ。シブがき隊を経て本格派俳優へと歩みを進めていた本木雅弘の放つスタイリッシュな華と色気に対し、吉岡は不器用で泥臭いピュアネスをぶつけ、息詰まる心理戦を展開した。
この奇跡のキャスティングを実現させたのが、フジテレビの名匠・杉田成道監督だ。『北の国から』で長年吉岡を見つめ続けてきた杉田監督だからこそ、吉岡の内側に眠る狂気や野生のエネルギーを誰よりも理解していた。監督は吉岡の「純朴な少年」というパブリックイメージを鮮やかに裏切り、退廃的で儚いロックスターの姿を見事に引き出してみせた。
二人の熱演は映画界で大きな話題を呼び、吉岡秀隆は第18回日本アカデミー賞 優秀助演男優賞を受賞。名実ともに日本映画界を牽引するトップランナーへと飛躍を遂げる決定打となった。