名作を生む夫婦脚本家・木皿泉の世界観と心揺さぶる創作の軌跡
木皿泉の才能はテレビドラマの世界にとどまらなかった。2013年に発表された小説『昨夜のカレー、明日のパン』は、若くして夫を亡くした主人公と、その義父の穏やかな共同生活を描いた傑作だ。悲しみを抱えながらも、人は日々の食事を作り、食べ、眠り、また朝を迎える。大切な人を失った喪失感を乗り越えるのではなく、その悲しみごと抱えて生きていく登場人物たちの姿は大きな感動を呼び、2014年の本屋大賞で第2位に輝く快挙を成し遂げた。
この小説はのちにNHKでドラマ化され、木皿自身が脚本を担当したことでも話題となった。原作が持つ繊細な心理描写と、映像ならではの余白の美しさが見事に融合した本作は、多くの視聴者の涙を誘った。生きることの切なさと温かさを同時に噛みしめさせる木皿ワールドの真骨頂といえる。