夜這いの本当の意味とは?映画の誤解を解く日本性愛史と共同体の掟
夜這いの本当の意味とは、単なる性的風習ではなく、村落共同体の存続を賭けた「婚前交渉の公認制度」であり、婚姻への実践的なステップであった。そこには無法どころか、現代人が驚くほど細やかな「掟」が存在していた。
最大の特徴は、女性側に絶対的な拒否権が存在した点だ。訪問する男性は素性を隠すために顔を覆うなどの儀礼を踏むが、女性側は相手が誰であるかを察知しており、意に沿わない相手に対しては敷居をまたぐことすら許さなかった。合意なき侵入は若者組の厳しい制裁対象となり、村八分に処されることも珍しくなかった。密室の逢瀬でありながら、背後には常に共同体全体の視線と規律が張り巡らされていたのである。
また、この風習は古代から続く「通い婚」の名残でもあった。男女が互いの相性を確かめ合い、共同体に認められたパートナーシップへと成熟していくプロセスとして機能していた。性愛を陰湿なタブーとして隠蔽するのではなく、生命の更新という共同体の至上命題に直結した公の営みとして位置づけていた点に、日本古来の性愛史の独自性がある。