塩ノ山に武田信玄の隠し塩?古今和歌集の聖地で迫る秘められた謎
塩ノ山の魅力は戦国史にとどまらない。歴史をさらに遡ると、そこには平安貴族たちが思いを馳せた文学の聖地としての姿が浮かび上がる。『古今和歌集』の編纂者として知られる紀貫之をはじめ、多くの歌人たちがこの山を題材に和歌を詠んだ。
「しほのやま さしながらへて あり経ぬる…」に代表されるように、「塩」という言葉の響きは、当時の人々にとっておめでたい祝福や不変の生命力を象徴するものだった。京の都から遠く離れた甲斐国にありながら、その均整の取れた美しい山容は、都人の情憬を深く揺さぶったのだ。軍事的な拠点となる以前から、この山は日本人の精神史において特別な意味を持ち続けていた。