喜多川歌麿の知られざる正体!蔦重との絆と手鎖刑に隠された真実
同時代を生きたもう一人の巨人・葛飾北斎との比較は、歌麿の個性を理解する上で極めて興味深い。森羅万象、森や波、妖怪から建築物まで世界のあらゆる構造を描き尽くそうとした北斎に対し、歌麿の視線はどこまでも「人間」、とりわけ女性の内面に極限まで絞り込まれていた。
歌麿の自負は強烈だった。作品の端々に「他の絵師が描く女の顔はどれも同じだが、私だけが女の真の心を写し取ることができる」という趣旨の添え書きを残すほど、己の観察眼に絶対の自信を持っていた。頑固で、妥協を許さず、同業のライバルたちに対しても歯に衣着せぬ毒舌を放つ。その強烈なプライドこそが、彼を前人未到の高みへと押し上げる原動力だった。