わずか一文字の怪!「長」苗字が語る能登名門の血統と家紋の真相
歴史検証番組『歴史探偵』さながらに家系の痕跡を検証していくと、長一族が用いた家紋にも興味深い謎が隠されている。能登長氏の代表的な家紋は「九枚笹(くまいざさ)」。笹の葉を9枚組み合わせた均整美を誇る意匠だが、別の系統の長家では「裏銭(うらぜに)」や「長楽銭」といった銭紋、あるいは「片喰(かたばみ)」を用いる例も少なくない。
日本家系図学会に属する研究者たちの近年の調査によって、従来の「能登発祥説」を覆す意外な事実が浮き彫りになってきた。実は、九州地方に分布する「長(おさ)」姓の一部は、能登の武家ルートとは全く系譜を異にし、古代阿波国の豪族「長国造(ながのくにのみやつこ)」の後裔や、豊後国(大分県)の古代官職に由来する土着豪族の流れを汲んでいる可能性が高いという点だ。
系譜学・姓名学の観点から家紋と古地名を照合した結果、海を渡って西日本各地へ広がった「海の長氏」と、山河の要衝を守り抜いた「武家の長氏」という、全く異なる二大潮流が存在していたことが分かってきた。同じ一文字の苗字でありながら、北陸の雪深い城郭と九州の温暖な湊町という、対極のルーツが交錯している事実は歴史愛好家の知的好奇心を刺激してやまない。