土俵の華「大銀杏」を結える条件とは?関取の誇りと床山の神技
大銀杏の造形美を語る上で欠かせないのが、相撲界の職人「床山(とこやま)」の存在だ。彼らは日本相撲協会に所属する専属の結髪師であり、その技は師匠から弟子へと完全な口伝で受け継がれる。
仕込みは、固いオーガニックなびん付け油を力士の髪へ丹念に揉み込むところから始まる。つげ櫛を小気味よく滑らせ、前髪を高く立ち上げながら、後頭部で美しい円弧を描くように整えていく。毛先を銀杏の葉のように扇状に広げ、細い「元結(もっとい)」と呼ばれる和紙の紐でミリ単位のズレもなく縛り上げる。所要時間はわずか15分から20分程度。
驚くべきは、激しいぶつかり合いを重ねても決して崩れないその強度だ。力士一人ひとりの頭の形、毛量、髪のクセは千差万別。床山は手のひらの感覚だけでそれを見極め、土俵上で最も力士が精悍に見える黄金比率を瞬時に作り出す。まさに門外不出の神業である。