『パチンコ』が照らす歴史と現在地、揺れる魂のアイデンティティ
映像表現の最前線が、沈黙の歴史を白日の下に晒した。火付け役となったのは、Apple TV+が巨額の製作費を投じて世に送り出したドラマ『パチンコ』だ。作家ミン・ジン・リーによる世界的ベストセラー小説を原作とした本作は、日韓米の国境と世代を跨ぐ壮大な大河ドラマとして世界中で絶賛を浴びた。
とりわけ、過酷な激動期を生き抜いた主人公・善慈(ソンジャ)の晩年を演じた名優ユン・ヨジョンの静謐な佇まいは、言葉を超えて観る者の胸を打つ。彼女がスクリーン越しに見せた深い眼差しと刻まれた皺には、歴史の荒波に抗いながら生活を築き上げた無名の人々の尊厳が宿っていた。映画業界や従来のメディアがどこか敬遠しがちだったテーマに対し、グローバルな映像配信産業が真っ向から挑み、世界水準のエンターテインメントとして結実させた意味は計り知れない。