世界三大料理の真実|なぜトルコ?教科書が語らぬ宮廷美食の深層
トルコ料理が三大料理の一角に君臨する最大の理由は、3大陸にまたがる大帝国を築いたオスマン帝国の栄華にある。イスタンブールのトプカプ宮殿に設けられた巨大厨房「マトバフ・アミレ(Matbah-ı Âmire)」では、常時数百人もの専門料理人が腕を競い合っていた。彼らはナス、羊肉、ピラフ、極薄のパイ生地で作るバクラヴァなど、素材や調理法ごとに厳密な分業体制を敷き、スルタン(皇帝)の舌を満足させるためだけに生涯を捧げた。
地中海、黒海、バルカン半島、中東、北アフリカから集まる最高級の香辛料と食材。それらを独自の洗練された技法で融合させたのがオスマン帝国宮廷料理である。食文化史の観点から見ても、シルクロードとスパイスルートの交差点に位置したイスタンブールは、世界中の食材が集まる究極の実験場だった。私たちが手軽に口にするヨーグルトの活用や、煮込み料理の精緻なスパイス使い、繊細なオリーブオイルの冷菜(ゼイトゥンヤウル)は、すべてこの帝国の宮廷から周辺諸国へと波及した遺産にほかならない。