市川猿之助セクハラ報道の真相と歌舞伎界を揺るがした事件の全貌
この事件がもたらした損失は、人権や倫理の面だけにとどまらない。芸術的な側面においても巨大な爪痕を残した。スーパー歌舞伎を代表する演目『ヤマトタケル』や『スーパー歌舞伎II ワンピース』など、現代歌舞伎の金字塔と称された作品群の演出・主演を担える唯一無二の存在を失った影響は計り知れない。
また、NHKの大河ドラマや各種エンタメ番組においても、猿之助が出演した過去作の放送や配信が見合わされるなど、メディア空間からの事実上の追放が行われた。作品に罪はないという議論がある一方で、被害者が存在する以上、放送を自粛せざるを得ないというメディア側の判断は当然の帰結とも言えた。
伝統と革新を融合させた現代歌舞伎の試みは、中心人物の退場によって大きな転換期を迎えざるを得なくなったのである。