『深夜特急』から『春に散る』へ!沢木耕太郎が語る独自の現在地
1970年代半ば、香港の雑踏からロンドンを目指して放たれた一人の青年。新潮社から刊行された『深夜特急』は、若者たちをバックパッカーへと駆り立てる一大ムーブメントを巻き起こした。ガイドブックもスマートフォンもない時代、自らの足と直感だけを頼りに進む旅は、危険と隣り合わせの冒険そのものだった。
熱気にむせ返るカルカッタ、静まり返るシルクロードの夜。彼が綴ったのは、観光名所の美しさではなく、見知らぬ他者と交わす視線の温度や、不条理な現実に直面したときの孤独だ。この作品によって、日本の旅文学は単なる情緒的な紀行から、自己の存在を賭けたドキュメンタリーへと決定的な変貌を遂げた。