ローマ帝国崩壊の引き金か?アントニヌスの疫病が招いた壊滅の真相
この疫病の正体について、当時の最高峰の医師であったガレノスが克明な観察記録を残しています。彼が記した医学書によると、患者は激しい高熱、喉の炎症と潰瘍、胸部から全身へ広がる膿疱(発疹)、さらには消化管の壊死による黒色便(タール状の下痢)や激しい嘔吐に苦しめられたと伝えられます。
これらの臨床所見から、現代の医学者や歴史学者の間では、病原体の正体は天然痘ウイルス(Variola virus)であったとする説が最も有力視されています。一部では麻疹(はしか)の初期流行とする見解もありますが、発疹の経過や約25〜30%に達する高い致死率、免疫を持たない処女地集団への劇的な被害状況は天然痘の疫学的特徴と極めて一致しています。