再生医療の天才・笹井芳樹氏の光と影|世界的偉業と騒動の真相
発生生物学の歴史において、細胞が自ら秩序を持って形作られる「自己組織化」を試験管内で再現することは、長年にわたる人類の夢だった。その扉をこじ開けたのが、京都大学再生医科学研究所の教授を経て、理化学研究所へと拠点を移した笹井芳樹氏の研究チームである。
彼が主導した「ES細胞立体臓器形成プロジェクト」は、世界中の研究者を瞠目させた。多能性幹細胞を特殊な三次元培養技術によって浮遊させ、適切なシグナルを与える。すると、細胞群はまるで胎内で起きる発生プロセスをなぞるかのように、自発的に層構造を形成し、大脳皮質の前駆組織や精密な眼杯(網膜)へと分化していったのだ。
この成果は世界的権威を持つネイチャー(Nature誌)に相次いで掲載され、再生医療・幹細胞生物学の領域にパラダイムシフトをもたらした。平坦なプレート上で細胞を増やすだけだった培養技術を、三次元の「機能的組織」へと進化させた功績は、ノーベル賞級のブレイクスルーと称賛された。