消えた歌王アイ・ジョージの波乱万丈な生涯と失踪の真相を追う
アイ・ジョージの真骨頂は、歌謡曲の枠を軽々と飛び越える国際感覚にあった。彼は「ラ・マラゲーニャ」をはじめとするラテン音楽や情熱的なボレロを完璧に消化し、自らの肉声へと昇華させていた。哀愁と情熱がせめぎ合うそのリズム解釈は、現代の耳で聴いても驚くほどモダンで鋭敏だ。
1963年には、日本人ポピュラー歌手として初となる米ニューヨークのカーネギーホール公演を成功させる。現地の批評家からも絶賛を浴び、全米ツアーを敢行するなど、そのスケール感は規格外だった。日本の音楽産業がまだ海外進出の足がかりすら掴めていなかった時代において、彼が切り拓いた地平は、後進のミュージシャンたちにとっても巨大な道標となった。