笑点を愛した桂歌丸の不屈の軌跡!円楽との絆と知られざる真実
晩年の歌丸は、度重なる肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)と闘い、体重は一時30キロ台前半まで落ち込んだ。歩くことすらやっとの身体。ドクターストップがかかることも日常茶飯事だった。しかし、彼が高座を降りることは決してなかった。
背中に酸素ボンベを背負い、鼻にチューブを通した痛々しい姿で釈台に向かう。だが、ひとたび扇子を手に取れば、瞬時にその場の空気が一変した。かすれがちだった声に艶が戻り、登場人物たちが鮮やかに息づき始める。観客は病気の老人を見に来たのではない。当代屈指の江戸落語の名人による、研ぎ澄まされた至芸に息を呑んでいたのだ。
「高座で死ねたら本望」。使い古された芸人の台詞のように聞こえるかもしれないが、歌丸にとってそれは文字通りの人生訓だった。息を引き取る直前までネタの筋を浚い、声の出し方を工夫し続けた執念は、現代の表現者たちにも強烈な一撃を与え続けている。