わずか2ミリグラムで命を奪う粉末、日本へ迫る最悪の薬物危機
かつてないスピードで広がる被害に対し、アメリカ麻薬取締局(DEA)は最高レベルの警戒体制を敷いている。DEAが押収した偽造錠剤の分析では、実に10錠中7錠に致死量以上のフェンタニルが含まれていたという戦慄のデータもある。前駆物質が海外の化学プラントからメキシコのカルテルへ送られ、拠点のラボで大量生産された後、巧妙な手口で国境を越えて密輸されるサプライチェーンが完全に確立されてしまった。
世界保健機関(WHO)も国際的な規制枠組みの強化を急ぐが、化学構造をわずかに改変した「フェンタニル類似体(アナログ)」が次々と生み出されるイタチごっこが続く。原料の調達コストは従来の植物由来ドラッグに比べて桁違いに安く、密輸時の体積も極限まで小さくできるため、カルテルにとってこれほどリスクが低く旨味の大きいビジネスは他にない。この強固な国際密造ネットワークが、いまやアジア太平洋地域へも触手を伸ばしている。