けもなれ再評価の理由とは?新垣結衣と松田龍平が魅せた傑作の裏側
本作を語る上で欠かせないのが、主演を務めた新垣結衣の圧倒的なリアリティだ。それまでの愛くるしいヒロイン像を静かに脱ぎ捨て、仕事の過剰な圧迫とプライベートの不条理に押し潰されそうな深海晶という女性を、繊細かつ泥臭く演じ切った。靴を脱ぎ捨てて叫びたくなるような限界寸前の日常を、微細な表情の変化や溜め息ひとつで表現する演技は、観客の感情を強く揺さぶる。
対照的に、世渡り上手な毒舌公認会計士・根元恒星を演じた松田龍平の佇まいも秀逸だ。感情を表に出さず、諦念を抱えながら生きる男の冷たさと優しさ。彼と新垣結衣が劇中のクラフトビールバー「5-Tap」で交わす、噛み合わないようで深く通じ合う会話のテンポは、大人のドラマとして極めて高い完成度を誇る。さらに、晶の恋人・花井京谷役を演じた田中圭の存在も見逃せない。優しさと優柔不断さの狭間で揺れる男の滑稽さと切なさを多層的に表現し、物語の対立軸に圧倒的なリアリティを与えた。