サカナクション『新宝島』知られざる制作秘話と現在進行形の熱量
楽曲の骨子を支えているのは、山口一郎が幼少期から親しんできた昭和の歌謡曲やドリフターズに代表されるレトロなエンターテインメント精神である。『新宝島』というタイトル自体、手塚治虫の初期の名作漫画からインスピレーションを得ており、温故知新の精神が随所に息づいている。
特に注視すべきは歌詞の精緻さだ。「丁寧」という言葉をはじめ、あえて口語的で素朴な日本語を選ぶことで、キャッチーでありながらも文学的な深みを持たせることに成功している。音楽業界において、ロックと歌謡曲、そしてクラブミュージックをここまでの高次元で融合させた例は極めて珍しい。山口一郎のポップネスに対する執念が、邦ロックの既成概念を鮮やかに塗り替えた瞬間であった。