市川猿之助の悲劇はなぜ起きたのか?公判記録と名門・澤瀉屋の真実
猿之助のキャリアは、伝統的な歌舞伎の枠を軽々と飛び越える快進撃の連続だった。その頂点が『スーパー歌舞伎II ワンピース』である。ルフィ役として宙を舞い、観客を熱狂させた姿は、現代エンターテインメントと伝統の幸福な融合として絶賛された。
しかし、その成功の陰で猿之助の背負う重責は肥大化の一途をたどっていた。演出、主演、興行のマネジメント、キャスティングに至るまで全権を握り、舞台上で骨折などの大怪我を負いながらも休むことなく走り続けた。過酷なスケジュールと過剰な責任感は、徐々に彼の精神を摩耗させていく。
さらに映像の世界でも圧倒的な存在感を示していた。NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での怪僧・文覚役の怪演は記憶に新しく、主要キャストとして出演していた映画『劇場版 緊急取調室 THE FINAL』は事件の影響で公開延期と再撮影・配役変更を余儀なくされた。また、事件直後にはNHKオンデマンドをはじめとする各配信プラットフォームで出演作の取り扱いが議論されるなど、芸能界・演劇界全体に走った激震と損害額は計り知れない規模に達した。