村上春樹の新作はどうなる?『街とその不確かな壁』文庫化と次回作の全貌
本作の物語は、高い壁に囲まれ、影を引き剥がされた人々が暮らす不思議な街と、現実世界を行き来する青年の魂の遍歴を描いています。
17歳の主人公「ぼく」が愛した少女は、「本当のわたしは高い壁に囲まれた街にいる」と言い残して姿を消してしまいます。成長した主人公はその街へと足を踏み入れ、図書館で「古い夢」を読む役目を担いますが、そこから現実と異界の境界線が次第に揺らいでいきます。中盤以降は、福島県の山あいの図書館を舞台にした静謐な人間ドラマへと展開し、読者を深い思索へと誘います。
名作『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の原型ともされるモチーフが、より温かみのある倫理観と死生観を伴って描き直されており、初期作品の持つ疾走感と後期の重厚さが見事に融合した構成が最大の読みどころです。