写ルンですの仕組みを徹底解剖!エモい写真が撮れる本当の理由
ボディの内部を構成するのは、わずか数十点に満たない最小限のパーツだ。しかし、その一つひとつに計算し尽くされた光学理論が詰め込まれている。
まず目を引くのが、焦点距離32mm、F値9〜11前後に固定された非球面メニスカスプラスチックレンズだ。ガラスレンズのような複雑な貼り合わせや色収差補正を行わないため、画面周辺部に向かうにつれてわずかな光量落ち(周辺減光)と甘い歪曲が発生する。現代のデジタルレンズ設計では「欠陥」として徹底的に排除されるこの歪みこそが、被写体を中心へ視線誘導し、夢の中のような情緒を立ち上げる主因となる。
パンフォーカス(固定焦点)設計により、およそ1メートルから無限遠までピントを合わせる操作は一切不要だ。そして露出を決定づけるのが、バネの張力だけで駆動する単速シャッター機構である。シャッタースピードはおよそ1/140秒の1速のみ。絞りも固定されているため、露出の調整という概念自体が存在しない。明るい屋外ではフィルム自体の広いダイナミックレンジに頼り、暗がりでは物理的な露出不足によって深いシャドウが生まれる。この極端な割り切りが、均質化されたデジタル写真にはない劇的なトーンを生む。