なぜ赤ちゃんは泣き止むのか?財津一郎とタケモトピアノの奇跡
「ピアノ売ってちょ〜だい、もっとモッ〜ト、タケモット!」——この唯一無二のフレーズは、台本通りの無機質な演技からは決して生まれ得なかった。名作コメディ・喜劇の舞台で観客を沸かせ、テレビ草創期の金字塔『てなもんや三度笠』や吉本新喜劇で鍛え上げられた財津氏の芸人魂が、わずか数十秒の枠に凝縮されている。
「ヒジョーにキビシーッ!」「〜してチョーダイ」といった数々の流行語を生み出してきた男は、コマーシャルの現場でも妥協を一切許さなかった。監督の指示を忠実にこなすだけでなく、自らの身体感覚とユーモアを注ぎ込み、テイクを重ねてあの絶妙な抑揚を完成させた。観る者を圧倒するエネルギーの源泉は、生涯を喜劇に捧げた表現者の誇りそのものだった。