名作『官僚たちの夏』が映す壮絶な権力闘争と実在モデルの真実
この重厚な人間ドラマを活写したのが、経済小説の巨匠・城山三郎である。1975年に発表された原作小説は、単なる官僚礼賛でも告発本でもない。冷徹な観察眼で描かれた第一級の政治フィクションであり、日本型組織の本質を抉り出した名著だ。
国家を良くしたいという純粋な志から始まったはずの情熱が、いつしか派閥争いやポスト争い、出世の駆け引きへと変質していく。派閥の論理に敗れた者が地方や閑職へと追いやられていく残酷な人事。城山三郎は、巨大な官僚組織が孕む構造的な宿痾と、その歯車になりきれない男たちの哀愁を見事にすくい上げた。組織に生きるすべてのビジネスパーソンが、本作に深い共感を覚える理由がここにある。