旧日本軍「人肉食」のタブーに迫る 機密公文書が明かす極限の真実
人肉食の証言が数多く残る地域の一つが、苛烈を極めたニューギニアの戦いである。「ジャワは天国、ビルマは地獄、生きて帰れぬニューギニア」と恐れられたこの地では、マラリアやデング熱といった風土病と飢餓が兵士を襲い、戦死者以上の病死・餓死者を出した。
この戦場での心理的極限を文学へと昇華させたのが、作家・大岡昇平の名作『野火』だ。フィリピン戦線を舞台としながらも、飢餓によって人間性を剥ぎ取られていく孤独な敗残兵の葛藤を容赦ないリアリズムで描いた同作は、神の存在や倫理の境界線を厳しく問いかけた。
作品が暴き出したのは、単なる空腹の苦しみではない。同胞の肉を喰らう誘惑と、人間として踏みとどまろうとする理性のせめぎ合いである。フィクションという形式を借りながらも、そこには戦場という異常空間で実際に起きていた精神の崩壊が生々しく投影されている。