九份は千と千尋のモデルか?ジブリ公式証言と聖地巡礼の全真相
噂の中心地となったのが、細い石段「豎崎路」の中腹に佇む茶芸館「阿妹茶樓(アメチャロウ)」だ。木造三階建ての重厚な梁、壁一面に吊り下げられた無数の赤い提灯、そして屋根の反り。夜間ライトアップされたその外観は、油屋の勝手口や湯婆婆の部屋を想起させずにはいられない。
2000年代初頭、インターネットの黎明期とともに個人の旅行記やSNSを通じて「リアル千と千尋の舞台」として写真が拡散した。アジア屈指のファンタジー映画として金字塔を打ち立てた本作のビジュアルと、九份の湿潤な空気感が完璧に合致した結果、いつしか「公認の聖地」という都市伝説が独り歩きを始めたのだ。
阿妹茶樓のテラス席に座り、凍頂烏龍茶の芳醇な香りを吸い込みながら見下ろす基隆の海は、確かに千尋が電車に乗って渡った水没した草原の景色を彷彿とさせる。公式が否定しようとも、旅人の心がそこに映画の影を見出してしまうのは、九份という街自体が持つ磁場の強さゆえだろう。