飢えと挫折の果てに宿る真の正義!アンパンマン誕生秘話の全真相
漫画家・絵本作家のやなせたかしが、生涯をかけて訴え続けたテーマがある。「正義とは何か」。その答えは、彼自身の過酷な戦争体験の中にあった。戦時中、中国大陸へ出征したやなせを襲った最大の敵は、銃弾ではなく圧倒的な「飢え」だった。野草をかじり、泥水をすすりながら生き延びる極限下で、人間が持つ高尚な思想や道徳など一瞬で吹き飛ぶ現実を骨の髄まで思い知らされたのだ。
終戦を迎えた途端、それまで掲げられていた「正義」は一夜にして悪へと反転した。昨日までの英雄が今日の犯罪者になる。国家やイデオロギーが語る正義の儚さと欺瞞に、やなせは深い虚無感を覚えたという。だが、どれほど世界が変わり価値観が揺らごうとも、絶対に揺るがない唯一の正義があった。それは「飢えて死にそうな人にお腹いっぱいの食べ物を差し出すこと」だ。
「本物の正義を行う人間は、自分が傷つくことを覚悟しなければならない」。この痛烈な哲学こそが、自らの身を削って飢えた者に差し出す孤高のヒーローを生み出す原動力となった。