芥川賞の異端児・田中慎弥の現在と沈黙を破る最新作の衝撃真相
芥川賞受賞後の田中は、単なる地方の私小説的作家にとどまらなかった。2016年に発表された『宰相A』では、架空の国「黒夷国」を舞台に、政治と個人の尊厳、言語の剥奪を巡る不条理なディストピアを描き出し、批評界に大きな波紋を広げた。現実の政治状況を戯画化しながらも、人間精神の根源に迫るその構造は、日本出版学会などの学術・研究の場でも現代文学における表現の極北として分析の対象となっている。
時代の空気に迎合して読みやすいエンターテインメントへと傾斜する作家が多いなか、田中は一貫して読者を安寧の場所から引きずり下ろすような純文学の牙を研ぎ続けている。言語に対する徹底的な不信と信頼。その矛盾を抱えたまま、彼は物語を編み出す。