家康の肖像画「しかみ像」の嘘?最新科学分析が暴く天下人の素顔
しかみ像の対極に位置するのが、江戸幕府の御用絵師・狩野探幽が手がけた一連の公式肖像画だ。久能山東照宮をはじめ各地の東照宮に遺されたその姿は、威厳に満ち、ふくよかで、一切の感情を削ぎ落とした「生ける神」として完成されている。
探幽の筆先が生み出したのは、老獪なリアリズムではなく徹底した偶像化だった。家康の死後、徳川の支配を盤石にするためのイコノグラフィー(図像学)として設計されたこれらの絵画には、人間・家康の肉体的な衰えや戦傷の痕跡は徹底的に排除されている。神として祀り上げられた東照大権現の涼やかな眼差しと、民間や後世の言説で肥大化したしかみ像の苦悶。この両極端なビジュアルの乖離こそが、家康という人物の多面性と、彼を神話に仕立て上げた徳川政権の演出力の高さを物語っている。