傀儡か野心家か?満洲国「執政 溥儀」未公開資料が暴く孤独の暗闘
そもそも、なぜ溥儀は満洲の地に足を踏み入れたのか。その導火線となったのが、1931年末に起きた緊迫の天津脱出劇だ。紫禁城を追放されて以来、天津の日本租界・張園で逼塞していた溥儀の周囲には、特務機関の周到な罠が張り巡らされていた。
ここで暗躍したのが、清朝皇族の血を引きながら男装の麗人スパイとして名を馳せた川島芳子である。彼女は不穏な空気や暗殺計画の噂を煽り、溥儀の猜疑心を極限まで高めることで、日本軍の保護下へ逃れる決断を後押しした。さらに溥儀の正妻・婉容を天津から満洲へと秘密裏に脱出させる任務も遂行している。
関東軍の工作員たちは、溥儀の「清朝再興」という悲願を巧みに弄び、安全な避難と引き換えに新国家の元首へと祭り上げた。忠誠を装って近づく特務工作者たちの甘言に踊らされ、自ら檻の中に飛び込んでしまった溥儀の選択が、その後の過酷な運命を決定づけた。