市川猿之助の悲劇はなぜ起きたのか?公判記録と名門・澤瀉屋の真実
名優の失脚と一家の崩壊は、澤瀉屋という一門の存亡そのものを揺るがした。崩壊の危機に直面した一門を救うべく立ち上がったのが、従兄弟である香川照之(市川中車)とその長男・市川團子だった。
香川自身もスキャンダルによる芸能活動の制限を経験していた最中だったが、澤瀉屋の灯を消さないため、舞台に立ち続けて一門の結束を図った。とりわけ、明治座の代役公演で見事な演技を披露し、急成長を遂げた市川團子の存在は、絶望の淵にあった澤瀉屋にとって唯一の希望の光となった。
興行主である松竹株式会社にとっても、猿之助不在の穴埋めは容易ではない。従来の看板演目をどう再編し、誰を軸に次世代の歌舞伎を構築していくのか。澤瀉屋が担ってきた「革新と挑戦」の精神をどう継承するかという課題は、興行ビジネスの構造そのものに抜本的な変革を迫ることとなった。