エベレスト「眠れる美女」の正体とは?遺体が語る壮絶な遭難の真相
エベレストの標高8,000メートル以上は、大気中の酸素濃度が平地の約3分の1にまで低下する「デスゾーン(死の地帯)」と呼ばれます。人間が長時間の滞在に耐えられないこの領域で、無酸素登頂を強行した代償はあまりにも過酷でした。
登頂に成功したものの、二人はすでに極度の疲労と酸素欠乏に陥っていました。下山の途中で激しい吹雪に見舞われ、日没を迎えてしまいます。標高8,600メートル付近での強制的なビバーク(露営)を余儀なくされた二人は、暗闇と猛烈な寒さの中で離れ離れになってしまいました。
翌朝、夫セルゲイは単身で標高8,300メートルのキャンプにたどり着きます。しかし、そこに最愛の妻フランシスの姿はありませんでした。セルゲイは極限状態にありながら、酸素ボンベと医薬品を携え、妻を救うため再び嵐が吹き荒れる山頂直下のデスゾーンへと登り返しました。これが、彼が生きて目撃された最後の姿となります。
セルゲイはフランシスの元へ辿り着こうとする過程で滑落したと見られ、翌年、斜面の下で遺体となって発見されました。妻を救いたいという一心で命を投げ出した夫の行動は、痛烈な悲劇として登山史に刻まれています。