東芝再建と行革の鬼!土光敏夫に学ぶ不確実な時代を生き抜く覚悟
「行革の鬼」と呼ばれた土光敏夫の本質は、冷酷な合理化主義者ではない。誰よりも現場を愛し、誰よりも自分自身に過酷な規律を課した「無私」のリーダーだった。彼が直面した最大の試練は、名門企業の再建と国家財政の建て直しという、いずれも失敗が許されない国家級の難題だった。
当時、派閥争いと赤字に苦しんでいた株式会社東芝のトップに就任した際、土光が最初に行ったのは書類の精読ではなく現場の徹底的な巡回だった。毎朝7時半には出社し、役員室に閉じこもる幹部を現場へ追い立てた。「社員はこれまでの3倍働け、役員は10倍働け、俺はそれ以上に働く」――このすさまじい宣言は、トップ自らが一番汗を流すという揺るぎない覚悟の裏返しだった。率先垂範を徹底するリーダーの前に、言い訳は通用しない。組織の空気を一変させ、わずか数年で東芝を再浮上させた舞台裏には、徹底した現場主義と人間への深い信頼があった。
さらに80年代初頭、80歳を超えて引き受けた第二次臨時行政調査会(土光臨調)では、財政破綻の危機に瀕した国家のタブーに切り込んだ。「増税なき財政再建」を掲げ、聖域視されていた国鉄や電電公社の民営化を断行。官僚の凄まじい抵抗に対し、私欲のない土光の舌鋒は一切鈍らなかった。彼が貫いた真のリーダーシップとは、権力を行使することではなく、自らの身を削って大義に殉じる姿勢そのものだった。