東京の夜を酔わす至高の音響と名酒:進化するミュージックバーの深淵
店内の空気を決定づけるのは、マスターやセレクターの指先から繰り出される音楽の物語だ。ブルーノート・ジャパンが牽引してきた本物のライヴカルチャーの熱気を受け継ぐように、バーのスピーカーからは濃密なモダン・ジャズが立ち上る。近年では映画『BLUE GIANT』の世界的ヒットも手伝い、若年層や海外ゲストの間で、サックスの息遣いやウッドベースの胴鳴りを生々しく味わう体験への関心が爆発的に高まった。
一方で、70〜80年代の日本のシティ・ポップが持つ都会的なグルーヴも、バーの夜に欠かせないスパイスとなっている。かつて作家の村上春樹氏がジャズ喫茶の店主として音と言葉を研ぎ澄ませていたように、選曲とは客に対する無言の対話だ。脈絡のないシャッフル再生では決して生まれない、感情のグラデーションを描き出すセレクション。グラスを傾ける時間は、キュレーターの知性と美学を巡る贅沢な旅となる。