電通・高橋まつりさん事件の真相と現在|過労死が変えた日本の労働環境
事件の背景には、単なる業務量の多さだけでなく、組織的な「残業隠し」と逃げ場のない心理的圧迫が存在していました。
三田労働基準監督署の調査によって明るみに出たのは、まつりさんの時間外労働が労災認定基準(過労死ライン)である月80時間を大幅に上回り、1か月で約105時間に達していたという過酷な実態です。しかし、会社の勤務管理システム上には、36協定(時間外労働の労使協定)の上限枠内に収めるため「月69.9時間」などと過少申告させられていた記録が残されていました。
さらに追い打ちをかけたのが、現場の上司たちによるハラスメントでした。指導と称して「君の残業時間の20時間は会社にとって無駄」「女子力がない」「髪ボサボサ、目が充血した状態で出社するな」といった心無い言葉が日常的に浴びせられていたことが認定されています。真面目で責任感の強かったまつりさんは、休むことや弱音を吐くことを許されない閉塞感の中で、鬱病を発症し正常な判断力を奪われていきました。