瀬尾まいこ『ありか』徹底解剖!結末の真相と読者を救うメッセージ
2019年に『そして、バトンは渡された』で本屋大賞を受賞し、映画化も大ヒットを記録したことは記憶に新しい。さらにパニック障害とPMSを抱える男女の交流を描いた『夜明けのすべて』など、他者との不器用な接続を温かく描いてきた瀬尾まいこ。だが、本作『ありか』で見せる眼差しは、従来のハートウォーミングな作風からさらに一歩、人間の暗がりへと踏み込んでいる。
これまでのヒューマンドラマで見せた「他者への信頼」という根底の哲学はそのままに、本作では「どうしても分かり合えない断絶」や「善意が生み出してしまう暴力性」にも鋭くメスを入れる。甘さだけではない、苦味を含んだ滋味深さ。作家としての円熟味が、行間から濃密に立ち上ってくる。