Bl界隈を揺らす新概念「カントボーイ」とは?身体と性の境界線
サブカルチャーにおける特殊設定に不慣れな読者にとって、この概念は既存のジャンルと混同されやすい。とりわけ比較対象に挙がるのが「オメガバース」と「ふたなり」だ。しかし、それぞれの文脈と構造を分解すると、明確な差異が浮かび上がる。
ふたなりは伝統的に、女性の身体に男性器が付加された状態、あるいは両方の性器を兼ね備えた「両性具有」を指すことが多い。視覚的な主眼はフェミニンな肉体と男根のギャップに置かれ、主に男性向け成人向け作品で独自の発展を遂げてきた歴史がある。
対照的に、オメガバースは「アルファ・ベータ・オメガ」という階級社会と特殊な生殖システムを構築したファンタジーだ。オメガの男性は妊娠可能な内部生殖器を持つが、外見や外部生殖器そのものは標準的な男性の構造を維持しているケースが標準とされる。
カントボーイが特異なのは、外見やアイデンティティが完全に男性でありながら、外部生殖器のみが女性器である点に絞り込まれていることだ。「男性同士の恋愛」というBLの枠組みを維持したまま、挿入・被挿入の関係性や身体的リアリティを根本から組み替える。この先鋭的な差異こそが、読者に強烈な認知的揺らぎを与える仕掛けとなっている。