本の街に迫る地殻変動:神田神保町の再開発と激変する老舗カルチャー
かつて夏目漱石をはじめとする文豪たちが闊歩し、議論を戦わせた神保町の喫茶店や書店。その文学的な情緒は、映画『森崎書店の日々』などを通じて国内のカルチャーファンに愛されてきた。しかし現在、街を埋める顔ぶれはさらに国際色豊かだ。
近年、Netflixのドキュメンタリー番組や海外クリエイターのSNS発信をきっかけに、世界中の活字中毒者やヴィンテージマニアが神保町へ押し寄せている。浮世絵や昭和のグラフィックデザイン誌、絶版になったアートブックを求め、欧米やアジア圏の若者がカウンター越しに店主と英語や翻訳アプリで交渉を交わす光景は、もはや日常だ。
「漱石の初版本を手にとってため息をつく海外の旅行者も珍しくない」。店頭で案内板を英語対応させた古書店員は語る。デジタル社会が行き着いた先で、手触りのある物質としての「紙」が放つ重み。それが国境を越えて新たな価値を生んでいる。