百田夏菜子の現在地とももクロの未来、知られざる表現の深層と素顔
女優としてのキャリアにおいて、大きな転機となったのは2016年のNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』への出演だろう。ヒロインの親友・多田良子役として、戦中戦後の激動を生き抜く女性の喜びと哀愁を自然体で演じきり、朝のお茶の間にその演技力の高さを知らしめた。
さらに2021年の主演映画『すくってごらん』では、ピアノの演奏とともにミステリアスなヒロイン・生駒吉乃役を好演。劇中での透明感あふれる歌唱と抑制の効いた佇まいは、従来の「元気印」というパブリックイメージを鮮やかに覆した。映画ライターの一人はこう分析する。「彼女の芝居の魅力は、セリフのない瞬間の饒舌さにある。視線の揺らぎやわずかな呼吸の乱れで、登場人物の抱える孤独や葛藤を観客の胸に直接届けてしまう」。
その表現の幅は映像実写にとどまらない。マーベル映画『ブラックパンサー』シリーズでは、天才科学者シュリの日本語吹き替えを続投。複雑な感情を抱えながら戦士へと成長していく難役を声だけで見事に立体化させ、海外作品の吹き替え界隈でも極めて高い評価を獲得した。