世界の王貞治が語る868本の真実と侍ジャパンを導いた勝負哲学
読売ジャイアンツの黄金期を牽引した「ON砲」は、プロ野球の枠組みを超えた社会現象だった。華麗なプレースタイルと天性のカリスマ性でファンを魅了した長嶋茂雄に対し、王はどこまでも寡黙に、そして冷徹に結果を出し続ける職人の佇まいを貫いた。太陽と月、動と静。対極にある二人が3番・4番に並び立つ打線は、相手投手陣にとって逃げ場のない悪夢そのものだった。
しかし、その華やかな表舞台の裏側には、常に健全なライバル心と深い敬意が存在していた。長嶋が三振してもスタンドが沸くのに対し、王はホームランを打って初めて歓声を受ける。その宿命を王は一度たりとも呪うことなく、むしろ自らの原動力へと昇華させていった。二人が築いたV9の伝説は、プロ野球が国民的エンターテインメントへと飛躍する決定打となったのである。